■ 休日のお誘い



、明日は暇か?」
「ん?暇よ。そうよ暇だわよ。やることなくて悪いかコンチキショー。」
「・・・・・。」
「で、なに。」
「湖と山、どっちだ?」
「海。ってゆーかなんの質問だコラ。」
・・・・海か。
「は?」
「いや別に・・・・。」
「なら聞くな〜!」
「明日、俺は出かけるが。」
「あ、そう。いってこい。」
「それでだな・・・・。」
「ヤダ。それより国光が誘うなんて珍しいね。」
「まだ何も言っていないが。」
「明日出かけることに今決めたの。だからパスね。」
「・・・・・・・・・・どこに行くんだ?」
「ラブラブする。」
「・・・!・・・。」
「どーかしたの?」
「いや別に・・・。(いつのまに・・・・誰とだ・・・?)
「別にって今日の国光どっか変よ?」
こうして手塚の休日のお誘いは失敗した



。明日は久しぶりに部活休みだね。」
「そーみたいね。国光が暇潰しにつきあえとか言ってたし。」
「えっ、手塚が?(先コサレタか・・・)
「だからとりあえず私予定できたわよ。・・・・周助も暇なのね?」
「僕も一緒していいよね♪」
「ヤダ。予定あるって今言ったじゃん。」
「だって手塚と一緒に出かけるんだったら僕もいてもかまわないでしょ?」
「そんなんじゃないわよ。国光もどっかでかけるとか言ってたからアレも暇じゃないわよ?」
「手塚と一緒じゃないの?」
「そうなるわね。」
こうして不二の休日のお誘いは失敗した



。明日食べ放題行かないか?」
「いいわね、アンタ幸せそうでさ。」
「そうかな?」
「そのメガネの光具合がね。メガネ店の外に置いてあるあの機械って、凄くピッカピカになるのよね。この間ビックリしたわ。ところでどこの店?乾のマークされてる店ってことは、それなりに上手いんでしょ?」
「ん。まあね。情報から分析すると凄くおいしいと出たよ。でも実はデータを取りに行きたいんだ。まだ試してないんだよ。」
「あ・・・・そう。じゃあうまかったら教えて。」
こうして乾のお誘いは失敗した



。明日食べ放題行かないかい?」
「さっき乾もおんなじ事言ってたわよ?」
「えぇっ?それほんとかい?」
「明日は私予定あるから、乾と行くといいわ。ほんで味見てきて。乾の評価だけだとなんか心配だし。」
「男ふたりで行くようなトコじゃないんだよ・・・。」
「もしやケーキ食い放題とか?」
「うん。そうなんだ。」
「へぇ・・・秀一郎ってなにげに甘党なんだね。知らんかった。」
「たまにはいいかと思って。甘さ的にはエージに負けるよ。」
「ははっ。英二、甘いの好きそうだもんね。だったらあの一年生の女の子とかも誘ってWデートとかしとけば?」
「そんなことしたら、越前に誤解されてかわいそうだよ。」
「ああそうか。あの子たち越前ファンだったっけ。」
こうして大石の休日のお誘いは失敗した



〜!!ねー明日英語教えて〜!!」
「英二、今日もハリキリマスターね。」
「なにそれ〜?」
「元気でいいなって思ってさ」
「ふーん。あ、明日勉強教えてよ〜。ふにゃ〜・・・。」
「あ、意外や意外、凹んでるのね。」
「そーにゃ。俺、英語の宿題が出されてさ〜。」
「・・・・ヤダ。」
「え〜、なんでだよぅ〜!?」
「宿題他のも全部、任せる気でしょ〜・・・」
「うにゃっ?そ、そんなことないにゃ〜。自分でやるにゃ〜。」
「じゃあ英二、英語も自分でやっとけ。」
「あぅっ。しまった〜。」
「秀一郎が明日ケーキ食い放題行くらしいし、ついてくといいわよ?」
こうして英二の休日のお誘いは失敗した



先輩。明日ストテニやりに行きません?」
「あ、桃ちゃん。それパス。明日は汗かきたくないの。」
「そーっすか。残念っす。ダブルスコートなんすよね。」
「そーね残念ね。私予定あるのよ。」
「どこか行くんすか?」
「うん。涼しいところに。」
「俺暇なんすよ〜。だから・・・」
「ヤダ。」
こうして桃城の休日のお誘いは失敗した



先輩、ちょっと・・・・」
「なに?薫ちゃん。」
「明日なんすけど・・・・・」
「明日は暇じゃないのよねー。薫ちゃんはジョギングでもしてなさい。」
「・・・・・・?」
「強くなりたいんならいつもの2倍よ?」
「・・・・・・ウッス。」
こうして海堂の休日のお誘いは失敗した



先輩。明日・・・」
「ヤダ。」
「・・・・・。」
「なんだ越前か。新井かマサやんかと思うたよ。」
「?」
「あ、明日ちょっと越前の家に寄るからお茶菓子用意しといて。」
「・・・ッス。」
「・・・・・・だめなんすか?」
「いいっすよ。」
こうして越前の休日のお誘いは成功した



は明日一体どこへ行くのだろうか



こちら桃城と海堂の会話である
「なぁ、マムシ・・・・。」
「ん?なんだ大食いヤロー。」
「余計なお世話だ。それよりよー、先輩明日どこ行くか知ってるか?」
「(ふるふるふる・・・・・。)」
「しらねーのか。マムシに聞くだけ無駄だったな。」
「ウルせー。コロスぞオラ。」
「やれるもんならやってみやがれってんだ。」
「テメーだって断られたんだろうが。」
「うっ・・・・。」
「フンッ。」
この二人の喧嘩もやや少しは成長したようだ
今にも取っ組み合いがはじまるような雰囲気は否めないがそれでもゴングが鳴らないだけマシといえるだろう

この二人の様子を観察していた乾も会話に混ざる
「二人とも断られたのか。残念だったね。」
「・・・ッス」
「乾先輩も断られたんすか?」
「ん?なんのことかな?・・・キラ―ン☆」
((やはりか))
桃城と海堂のコンビはこういうときに絶好調
乾だって負けちゃいられない
「俺のデータでは食い放題がニジュウマルだったんだけどね・・・。」
というより負け惜しみ

そこへ
「乾に便乗しようかと思ったんだけどなぁ・・・・。」
「あ、大石先輩。」
「大石食べ放題苦手じゃなかったっけ?」
「ん、本当はね。でもが一緒なら平気だよ。」
「「そーゆーもんすか??」」
「だって一緒に居るだけで楽しいじゃないか。」
「それにの評価は抜群だしな。」
「あ、俺、豆嫌いって噂、聞いた事ありますよ。」
「豆?それは貴重なデータだな。」
「あ、乾、今よからぬ事思いついただろ?」
「大石、よく気付いたね☆」
「フシュ?」
「海堂・・・・・詮索しない方が身のためだよ。」
「それ、なんか言えてますね。」
「そうかな☆ニタリ」
ブルブルブル・・・海堂は怯えていた








一箇所に集まっているのに気付いた不二が、情報を得るためその輪に近づいた。
集まっている面々が、皆、暗い雰囲気を背負っている。
「僕らみんな玉砕したみたいだね。」
「不二もか。」
少し驚きをかいま見せた大石に、不二は不機嫌そうに答えた。
「まあね。」
「菊丸先輩は?」
桃城の質問に大石が答えた。
「ああ、英二なら、たぶん無理だと思うよ。課題があるって言ってたから、そんな暇ないんじゃないかな。」
三年は、一同納得である。
疑問に思った海堂が、と同じクラスである不二に質問する。
先輩は、課題、出てないんすか?」
「もちろん出てないよ。は面倒臭がりだけど、その辺は上手くやってるからね。僕もいるし。」
大石は、やっぱり・・・、と口篭もりながら一人を挙げる。
「やっぱり手塚かな?」
不二は即座に否定した。
「ためしに聞いてみたけど、は断ったそうだよ。」
それを聞いた乾は、大石は言う。
「手塚まで断られたのか・・・。」
はまるで予測不可能だ。」
乾はお手上げ状態だった。
「それはそうだよ。なんだから。」
「乾のデータもアテにならない、か。」
また一段と暗くなりはじめたところで、不二が仕切り直す。
「それで、予定とかは聞いたの?」
返事がないので、不二は肩を落とした。
「みんな使えないなぁ・・・。」

桃城は、ふと思いついた。
「あっ、俺、たしか聞いたっす!涼しいところに行くとかって。」
嬉々として言う桃城に、乾は冷静に返す。
「抽象的すぎるな。」
大石は、乾に同調しながら、しみじみと言う。
「うん・・・。涼しいっていっても沢山あるし、絞れないな。」
不二は、桃城に向けて、改めて言い直した。
「使えない。」
グサリと刺さる。




ってば、明日、何の用事があるんだろうね。」
不思議そうに不二が呟く。
そこへ通りかかった越前は、勝ち誇ったような態度である。
「そうっすね。」
皆の視線が越前に向けられると、越前は目をそらした。
明らかに何かおかしい。
「越前なにか知ってるね。」
「・・・知らないっす(悦)」
「(((・・・・大穴だ・・・・)))」
「先輩達もまだまだだね。」
皆の目に闘志が映る。
一発触発の雰囲気だ。

余裕ありげな越前であったが、なぜが越前家にくるのか疑問であった。

釈然としないが、一応、誘いは成功したのであるから、いいのだろう。
と、越前は思うことにした。




      ◇◆◇◆◇◆◇




は翌日、手塚国光・国一ペアが起きるより早く、手塚家を出て行った。
国光は、母彩菜からが外出した事を聞くと、しまった、と思った。
休みの日、ということもあって、平日よりも多目に体を休めたのが仇になった。
僅かに顔色が違う国光を見て、母は訝しげに思う。
「国光、どうかなさった?」
「母さん。が何処に行ったのか知っていますか?」
「お散歩だって言ってたわよ?」
「・・・そうですか。」
「そのあと、一年生のお宅に寄って帰ってくるって言っていたわ。」
「一年の・・・?」
手塚国光の瞳に炎が灯った。




はまだ、日本へ来て、観光をしていなかった。
目の前にある古臭い建物は、ガイドブックで見たものとよく似ている
「結構、こじんまりとしてるなぁ・・・。」
境内に入ったは、参拝帳に記録する。

「おうっ、。あいつから来るとは聞いてたが、ほんとに来たんだな。」
南次郎が声をかけた。
「南ちゃんって、ほんとーに、住職なんだね。」
「オイオイ。オレをなんだと思ってたんだ。」
「エロオヤジ。」
「ほっとけ。それより、あいつが待ってるぞ。」
「リョーマが?」
「昨日からソワソワしててな。いやぁ〜あ、青春っていいねぇ〜!」
「ふーん。じゃああとで。」
サラッと流して思わぬ方向に歩きだすを、南次郎は呼び止めた。
「オイオイ、どっち行くんだ?玄関はあっちだぜ?」
「あとで行く。ちょっくら見学しようと思って。」
「アレに会いにきたんじゃねえの?」
「そっちはついで。今日は観光しようと思ってたの。」
がそういうと、南次郎は豪快に笑いだした。

は、そんな南次郎を見上げた。
「南ちゃん、どうしたの?」
「いやいや、こっちの話。ささ、好きなところ見てきな。」
「入っちゃっていーの?」
「リョーマには伝えといてやるから行ってきな。昼飯までには来いよ。」




は寺の真中にある大きな箱の前まで歩いた。
奥には、たいそう大事そうにくすぶり光る人形が見える。
は本堂に入って、その仏像をじろじろと眺めた。
いろんな角度から見ると、その表情が変わる気がして面白い。
手を伸ばしてみたが、触れてはいけないような気がして手を引っ込める。

仏像の置かれた台より少し手前に、包みのようなモノがおいてある。
『お布施』
なんだろうこれ。
施し・・・お守りとか、護符みたいなもの、かな。
・・・開いちゃ・・・ダメだよね。
は、再度手を引っ込める。

なんだか気後れするなぁ・・・。


は引き返した。
本堂を出ると少し眩しくて、手で光の入り具合を遮ってみると、自分の影が地に伸びた。
ここに来る前とは、世界の色がまるで違った気がした。
は息を深く吸った。
感動的・・・。


は御堂の廊下に回って、床に座った。
足を外に出すようにブラブラとさせてみる。
ほどよい程度に、木の香が漂ってくる。
アロマテラピーのように、その空気に心地よく酔った。
は突然、手塚の祖父の言葉を思い出した。
――『心身共に健康であれ!』
はそれを自分流に意訳する。
「心身共にリフレッシュ、って感じカナ。」

「リフレッシュ、すか?」
帽子を被っていないリョーマが、顔を覗かせた。
見慣れていないからか、新鮮な感じを受ける。
「リョーマにはリフレッシュ必要なさそう。」
「そんなことないっすよ。」
そういってリョーマは、の隣に座った。
「悪い意味で言ってるんじゃないわよ?」
「わかってます。」

リョーマは思う。
今、すごくいい顔してる。
でもこの人、それに気付いてないんだろうな。
邪魔にならないよう、リョーマはいくぶん腰を後ろにずらした。
もう少し見ていたい、とそう願った。

木の葉から覗いた、地に降り注ぐ点々とした光が、暖かさを物語る。
葉のささやきが、沈黙の重さをかき消して、穏やかさを示す。

どこかと少し似てるな・・・とはふと思った。
ああ・・・手塚家にある庭も似たような雰囲気をしている。
縁側で光を浴びるのと同じように、はリラックスしていた。

「リョーマっていい所に住んでるね。」
「そうっすか?」
「キリストってさ。天高いところにいるでしょう?」
ここは寺なんすけど・・・。関係あるんすか?
と思ったが、リョーマは口に出さなかった。
リョーマが頷いたのを見て、は感慨深そうに言う。
「キリストって、天高いところから見守っているような感じで・・・・・・、見上げるんだけど、手が届かないんだよね。」
リョーマはいぶかしみながらもを見つめる。
「でも、仏教ってさ。自分の中にいるんでしょう?・・・それって凄いな、と思う。」
空を見上げているは、どこか遠くを見ている。
リョーマは同じものを見たくて、同じように、空を見上げた。
「・・・オレ、考えたことなかったけど・・・、今、少し好きになった。」
「仏教が?」
それだけではなくて
先輩のことも
自分自身も
好きになった、そんな気がする
前よりも確実に
「自分の事ほどわからないっていうけど。本当はすぐ傍にあって。手の届くところにあって。それに気付くか気付かないかでだいぶ違ってきたりするけど。人はそれを探すために生きてる。・・・オヤジが言ってた。『すべては自分の中にある』、それって、そういうことなんじゃないっすかね?」

淡々と告げるリョーマに、は少し驚いたように呟く。
「哲学だね・・。」
「何か迷ってるんすか?」
「特には何も。」
何かあったとしても、この人は、オレには言わないだろう
リョーマはそう思った。
年下である自分が少し悔しく感じる。


風が強くなってきた。
空に雲がかかる。


「さてと。そろそろ行こうか。」
「いつか、辿り着きたいっすね。」
自分自身の欲も葛藤もすべて乗り越えて、そんなの全然関係なくて
欲しいものを欲しいといえるように
やりたいと思えるものを無我夢中でやって
まだ見ぬ最果ての地は、まだまだ遠いけれど
それでもひとつずつ、進んでゆきたい。

「オレ、先輩のこと好きっすよ。」

ふと自然に出た言葉に、 先輩は驚きもせず笑っている。
なにか言っていたが、全然耳に入らなかった。
というか、どんな返事だったとしても気にならなかったんだと思う。




      ◇◆◇◆◇◆◇




家に戻ると、テニス部メンツが揃っていた
カチローとか桜乃まで居る。

「・・・なんなんすか、これ。」
「親睦を深めようの会。」
「・・・なんでオレん家なんすか。」
「なんとなくね。」
悪びれもせず、乾と不二の両先輩はそう言った。

ぜってー・・・狙ってやがった
リョーマはいろいろな方角からチクチクと視線を向けられていた。
無理もないか。バレバレだったし。
堀尾や桃城先輩が、興味深そうに俺を突付く。
どこ行ってたんだよ、と囲まれて問われたが、誰にも教えたくなかった。


は笑っている

まぁ・・・いいか


も、何処に行っていたのか言わなかった。
英二の執拗な質問にもただ笑っているだけだった。
「内緒。」
その答えに、リョーマも嬉しくなる。



けれど、は言った。
「国光、帰ろう?」
手塚は少し驚いたように言う。
「もう帰るのか?」
「うん。なんだか早く家に帰りたくてね。」
せかされるように、手塚はに引っ張られていった。



玄関のドアが閉まるまで、皆、呆気にとられていた。







あとがき

springtime of life 3年生時代
まだ本編でリョマさん登場してないのにねぇ・・・
リョマさん、不憫なので、出番あげたくてあげたくて。(笑)


ちなみにコレ、11111ヒッター葵ちゃまへの贈り物なんですが
肝心の国光勝ってるの!?勝ってないの!?(ビミョー・・・オロオロ)

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