ウェディング 8




手塚の肩に、頭をもたらせながら、考えていたことがある

突然思い出してしまったものを、頭から離すことはなかなかできない
それなりにショックを受けているんだろうか
どんな会話をしていても、キーワードを見つけてしまったかのように、昨日の出来事へと繋がってしまう
普段なら別段気にしないような言葉が、あれこれと繋がっていく
まるで、答えを知っているかのような、パズルだ、と思った
結局はそこにいきつく
終わったんだ、と
破滅への輪舞曲(ロンド)は、終着駅に着いたんだ、と
しかしそれは、乗り換え駅に過ぎないのだ

たしかに当初は動揺した
だけど、元々好きだったのかはわからない
それなりに愛していたのかもしれない
なぜ自分がこんなにショックを受けているのかわからない
恨めしゅうございます
化けてでてやろうか
少しでも私のことを気にかけていてくれたら、どんなに幸せだろうか
自分ばかり悩んで、向こうが何とも思っていなかったとしたら、とても悔しい
は怒ってる?』
あれは、その意思表示だっただろうか

電話を通した残響が、耳に残る
あの、響きが好きだった

この手で、レールを変えなければ




は風を感じていた
手塚の運転する車の中である
窓を全開にして、冷たくて涼しいけれど、どこか暖かい風を感じていた

一人で行けると手塚の申し出を断ったのだが、彼は頑として首を縦に振らなかった
事故る可能性も、否定できそうになかったので、承諾した

何も考えないでいられる時間が、とても嬉しい
ひとたび、あいつを目にしたら、決心が揺らぎそうだった
嫌いじゃない、とても好きだ
その言葉がこの口から飛び出すんじゃないかと思う
それを決して口にしてはならない
もしそうすれば、また私は、螺旋を描いてしまう
心の準備が必要だ

ああ、ムカツク
あいつのどこからでてくるのか謎な自信を、ほんの少しでも私が持っていたならば
破滅への輪舞曲
こんなにアホ臭い唄を歌わなくて済んだのに

だけど、心底から嫌えない
なぜこんなに好きだったんだろう
どんなに、あいつの悪行をならべても
無駄だ、それを上回るほどの、あいつのいい所を知っている

あいつの行動に理由はない
おそらく、私のことは、好きでも嫌いでもないんだろう
ただ、手元に置きたかった
それだけだろう

終わらせなければ




車は、静かに、柔らかく止まった




ああ、行かなければ
そして、終わらせなければ
決心が鈍らないうちに

「平気か?」
目を瞑っているに、手塚は心配そうに声をかけた

ああ、この人は、私を見守っていてくれる
そう思ったら、少し心強くなった

まるで、神様みたいだな
あいつは、俺様だけど
そう思って、少し笑ってしまった

修羅場を前にして、クッと笑うを見て、手塚は眉をひそめた。
ああ、ほんとうにこの人は
二人とも、なんて暖かいんだろう

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ

私はそう唄って、車を後にした。





あとがき

さて、新郎はズバリあの人ですね
花は散るゆえに美しい





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