世界で一番信用できない  10


とまぁ、こんな感じでコンパ始まっちゃったんだけど。
カラオケ、とか言われて、持ち歌のない私はどうしようと焦った。

出だしは元気よく、菊丸君がスタートを切った。
流行の歌なので、耳慣れた音楽が爽快だ。
カラオケ慣れしているような気がする。
コンビニなどで、よく流れる曲。
私も持ち歌を、何曲かほしいな、と思う。
今度、と特訓しに行こうかな・・・。

不二君は、コマーシャルソングでよく聞く歌を歌った。
サビ部分だけだけど、口ずさんだりすることもできてハモり具合が面白かった。
この〜木、なんの木、気になる木〜
よく考えれば、おかしな歌詞だ。
しかし、考えついた人は、凄いと思う。
コマーシャルを通り越して、知らない人はいない童謡のようになっている。
その間、菊丸が、振りをつけている。

手塚君は、あまり歌わなくて、十八番(オハコ)の「横顔」というマイナーな歌を歌っていたが、
耳に心地よい歌だ。
はじめは、この人は音痴だろう、と決めてかかっていたから、思ってもみないうまさに、腰が抜けた。
人は、見かけで判断しちゃ、いけないね・・・。

6人もいれば、あまりマイクは回ってこない。
それは救いだった。
しかしなんでみなさんめちゃくちゃ歌が上手いんだ。
音痴が居たっていいだろうに、ここはどこかのオーディションかと思えるほどだ。
新曲の気になっている歌を見つけ、「これ歌える?」と菊丸君に聞いてみると、チェック早いらしく、まかせて、と嬉しそうにほいほい歌ってくれる。
サビしか知らないけれど、菊丸くんが歌う曲は全体的にいいなと思ったし、今度レンタルしてみようかな、と思った。

続いて流行りのテンポのいい歌で盛り上がっている
私の持ち歌があまりない事に気づいているは、さくさくと自分の歌をこんなのどう、とチョイスしてくれる。
見つからないと、括弧付きの歌詞だけのためにマイクをもたされ、それで乗り切る。
時折のヘッドバンキングではノリノリだ。
ひとりでやらせるのも妙なので、自分も参加する。
馬鹿やるのは基本的に大好きなのだ。
二人でやってると、自信がつくものなのか、首振り首振りヘッドバンキング地獄。
最初はちょっと唖然とした雰囲気もあったのだが、サビ終わりの疲れた顔をあげると菊丸と目が合った。
照れもあって笑ってみたら、菊丸も思惑ありげに楽しそうに笑った。
うつってます。伝染というやつでしょうか。
菊丸も加わって、3人、4人・・・と次々に連鎖していく首振り人間。
もはや誰も抵抗することもできなくなり、嫌そうな人を含めて6人みんなでやってるこの行動は、監視カメラから見ると異様な光景でしょう。
たったの一曲だというのにぐっさり疲れて、次の曲は、というと、誰も入れていなかった。
しばしの沈黙がなにげに痛い。


すると、はパラパラと歌めくり歌探しを即効で決めると、コードを入れた。
静かな曲が欲しいところだ。
流れた曲は、女性ボーカルのふんわりとした落ち着いた歌で、自分の好きな歌だった。
気づかなかったが、その歌があった、と思い当たる。
こっそりと自分の持ち歌リストに加える。
流れはじめた画面から、題名と曲名をメモリーする。
すると、唐突にからマイクを渡された。
付き合え、ってことかと思ったが、はマイクを手放している。
ってことは、歌えってことか。
歌えるか、心配だ・・・。
もうどうにでもなれ、とその歌を歌わせてもらった。
身体が自然に覚えていたようで、最期まで歌いきる。
終わった時は、拍手もあがり、滅茶苦茶褒められた。
半ば開き直りであったのだが、自己陶酔していたような感じもする。
今になって、ちょっと恥ずかしくなった。
それが今日のラストソングとなった。




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