世界で一番信用できない  8


菊丸が乾ドリンクを飲んで倒れた。
失神した菊丸を大石が介抱している。
「英二?」
「う〜・・・・。」
「あの液体を飲んじゃうとは思わなかったよ。」
乾に差し出された緑汁。
バツゲームでもないのに、菊丸はそれを手にとり飲んでしまったのだ。
部活が始まったときから、英二はどこか上の空だった。
前もって覚悟しておかないと、こういう事態になるのか、と思うと、大石はやりきれなかった。
意識はだいぶ回復したようだが、涙目である。
身体に悪いものは、一切入っていない。それどころか、乾は無添加物マニアだ。
だから大丈夫だと思う。・・・思うんだけどなぁ・・・。

「ね〜大石。お願いがあるんだけど〜。」
「なんだい、英二?」
「今度の日曜開いてる?」
「あっ、ごめん。その日はちょっと用事があるんだ。」
「えぇっ〜。ずらせない?ずらせない?」
「何だい?大事な事かい?」
「俺にとっては、チョー大事!」
菊丸はショボーンとしたり、切羽詰っている表情をする。
それで今日は上の空だったわけか。
「・・・話してごらん。」
モゴモゴと菊丸は話しだす。
その頬には、赤みが差している。
ぼそぼそと小声だったり、急にはっきりした声になったり、すがるような目で大石を見る。
すべて聞き終わった大石は、驚いた顔をしながら素っ頓狂な声を荒げた。
「え!!えぇ〜!?」
「しっ、声でかいよ、大石。」
「ご、ごめん。で、でも・・・・。」
「ダメ・・・かなぁ?」
「ごめんよ。俺、そういうの慣れてないし。それに・・・・その日法事なんだ。」
「そっかぁ〜・・・・ダメかぁ・・・。」
「不二、連れて行けば?」
そうか、不二!!
でも・・・あいつモテるし。人受けいいし。
「ダ、ダメダメ!不二なんか!!」
俺より不二の方がさんと仲いいみたいだし!!
「英二、・・・・僕なんかで悪かったね?」
噂の人物はよく出没するものだ。
心臓が飛び出すほどビックリしたが、神出鬼没な不二である。
いつでも心の準備はできていた。
「なんでもないよ!なんでも!」
もしそんなコトになったら・・・・・・強敵じゃん!!!
「ふ〜ん。・・・で、なんの話?大石。」
絶対教えてやるもんか。
「今度の日曜の話してたんだ。」
「あ〜!!大石!!ダメダメ〜!!大石言っちゃダメ〜!!」
「なんでだい?」
「英二、どうかしたの?」
あ、でも不二ならいいかも。
盛り上げてくれそうだし、こういうの詳しそうだし。なんとなくだけど。
女の子の事とか、話するのとか上手そうじゃん。
それに、協力してもらえば、最強じゃん。
「不二って・・・日曜って・・・もしかして・・・暇?」
「何いきなり。手のひら返しちゃって。」
「ダメならいいんだよね、ダメなら。うん。・・・で、ダメだよねvv」
「暇だけど、日曜がどうかしたの?」
ニヤリと微笑んだかのように見えてしまったのは、不二の普段の行動を表しているのだろうか。
菊丸英二は、顎が外れかかっていた。




「あ〜!だ!久〜、元気〜!?」
「あ〜!チーちゃん!久〜、そっちも元気〜!?」
そしてハグ。
このチーちゃんという人物、私よりも小柄ながら水泳部の先駆者である。
と同じクラス、というのもあって、とは仲がよいと思われる。
チビのチを取って、チーちゃんなのだ。名付け親は、もちろん
そのアダナはまずいんじゃないかと訴えてはみたものの、それでいいと本人が言う以上、それに同調させてもらうことにしている。
チーちゃんは、私の家と近い所に住んでいる。その上、寝坊気味なトコロが、私とよく似ている。
だから朝の時間帯がほとんど同じなので、部活がない時はよく会うことが多いのだ。
そんなわけで、親しいとも言えるだろう。
しかし、放課後を共にした事は、まだ、ない。
。ほんとに彼氏いないの?」
「いないいない。コンパだって行ったことない。」
「うそぉ!一度もっっ!?」
「ほんとほんと。誰も連れてってくれないの〜。」
「えぇ〜、じゃ私と行こーよ。」
「ほんとぉ〜?じゃ〜楽しみにしてる〜。」
「うん。じゃ、次の日曜で、どう?」
「えぇっ!?!?」
突然の申し出に困惑した。
「忙しい?」
「・・・っていうか、こりゃまた早いね。」
自分が言い出した事とはいえ、本当に参加するハメになるとは・・・。
「数打ちゃアタル!」
「うわ〜、お下品な。・・・っても、どうしようかなぁ・・・・。」
遊びに行くこと自体は問題ないのだけど、正直、コンパというものにいいイメージはない。
「大丈夫大丈夫。ちゃんとイケメン揃えるから。」
「イケメンねぇ・・・。他には誰が行くの?それによるよ。」
メンツ的にどうなのだろう・・・。
イケメンかどうかはさほど重要ではない。私にとっては。少しくらいは気になるが。
それよりも、女の子勢のほうが気になるのだ。
チーちゃんは小柄で女の子らしい。
背丈は私も似たようなものだが、こんなにかわいくはない。
今時の子、という感じがするし、私は女の子としては遅れをとっているだろう。
こりゃ、私なんて、引き立て役でしかないのではないだろうか。
が行くって。心配ないよvv」
「あぁ〜、そうなの・・・」
かわいい二人を連れて歩くのは、余計不安になってきた。
「また、初恋のキミ、とか言ったら笑うよ。」
塩素で黒色が抜けた茶髪をなびかせ、面白そうにいう。
不二の上着を大石さんのだと豪語していたあの場に、チーちゃんも居た。
だから、そんな言葉が出てきたのだろう。
私はチーちゃんのつっこみセリフに笑った。
あまり行きたいものではない、と言えるものなら言いたいところだ。
だけど、実際経験のないコンパというものに、多少ならずとも興味はあった。
好奇心旺盛な自分の実状に、たとえ引き立て役でも一度くらいは行ってみたいという無謀な野心があった。
それは、野次馬根性だったけれど、チーちゃんと遊んでみたいというちょっとした願いも手伝って、苦笑しながら私は「出席」という丸印を返答した。
「・・・今度の日曜楽しみにしてるね。」




菊丸英二の苦悩。
「あともう一人なんだけど、誰にしよ・・・。」
申し合わせたかのように、皆、その日は忙しい、の連発だった。
「英二、・・・・・・誰も都合つかなかったら、二人でいいんじゃない?」
「ダメダメ!絶対3対3だってば!」
「桃とか、聞いてみたら?」
「ダメダメ、年下ってかわいいじゃん。俺のポジションとられちゃうし。」
英二は可愛がられるポジション希望なのか。
「へぇ〜、そうなんだ。・・・・・・・・誰でもいいんじゃない?」
「えぇ〜!?そんな〜。」
「じゃ、あそこにいる手塚とか。」
「強敵じゃん!ナンバーワンだよアイツ!俺、ナンバースリーじゃんか!」
ああいえばこういう。
自称ナンバースリーだそうだ。
どっからその発想がでてくるのか。
決めるならさっさと決めようよ。
「でも接点なさそうだよ。元々静かだし。適任適任。」
「手塚、盛り下げ役じゃん。目つきとか、印象悪いかもよ。」
考えてみたら、結構酷い言われ様だ。
「その分、英二が頑張れば好感度アップじゃない?」
「そーかも・・・。よし!手塚にアッタクナンバーワンだ!」
「・・・・・。」
姉妹兄弟が沢山いる英二は、姉と見たアニメが根付いていた。
かくいう不二も、同じく自分の姉から見させられたことがあった。
思えばそのセリフは、センスナシ、だ。




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