世界で一番信用できない  9


ということで、日曜日。
は、まず、洋服選びで迷っていた。
別に普段着でいいじゃないか、と私は思う。
いつもと違う服装は、騙してる気分になる。
気合入れて可愛くね、とアドバイスするチーちゃんの顔を思い出す。
ある意味、念を押しているような気がした。
着てみては沈没の繰り返し。
だいたいヒラヒラでフリフリのグルグルに可愛いらしい服装は、似合わないんだ、自分は。
スカートなんてもともと履かない人種なんだ。
だからといって、ジーンズにTシャツ、そこに革ジャケット、でいいのだろうか。
せめてチビTにしてみようとか思うが目立つ胸が落ち着かない。
あまりにわからなくて、に迎えにきてもらうまで、悩んでいた。
結局は、に言われるがままになったが、自分らしい、服装になったと思う。
どんな奇抜な服装になることかと少し警戒していた私は、ほっとした。



「あっ。来たよ。」
見た途端、私は口をあんぐり開けた。
三人ともオシャレだ。
服装に気を使っているのがわかる。
右からカジュアル、トラッド、モダン・・・。
よく分からずに使っているんだけど、そんな感じの服装だ。
それも風貌によく似合っている。
「ごめん。くるの、遅かった?」
「ううん。来たばっか。」
よくよくみれば、全員イケメンなんじゃないか?
皆、自分に似合うおしゃれを知っている。
・・・・・・場違いだろ自分・・・・・・。
なんだか遠い目になってきた。
ところで、右から菊丸、不二、それから・・・・ええっと、とりあえず全員見たことがある。
さん?」
「あっ、不二くん。なんで君達なの?」
「知らなかったの?」
「うん。まぁそうなんだけど。不二君達なら、こんなとこ来る必要なくない?」
モテるんだし。
コンパをする必要がどこにあるというのか。
ちょちょい、と声をかければ、すぐ誰かひっかかってくれるに違いない。
「えっ?そんなことないよ。みんな暇だったからね。それをいうなら、さんだって、そうじゃない?」
と、不二はニッコリと笑う。
私は、その意味を図りかねた。
私も、必要とはしていない。だけど来たのは、暇だったから、である。
ああ、そうか。
不二君も同じなのか、と安心する。
すると、不二は、笑顔のままで首を傾けると、クスっと笑った。
「・・・どういうことだ?」
不二の後ろで、ええっと・・・・誰だっけ、が眉間に皺を寄せながら不二を睨んでいる。
「そういえば言ってなかったっけ。」
「そういうのは事前に言っておくものだ。」
「ちょっと手塚、こっちきてよ・・・。」
不二は手塚とかいうその人を連れて行った。
どうやらあの人は知らされてなかったみたいだ。
私だって誰が来るのか知らなかったけど。
いくらイケメン揃えるったって、揃えすぎなんじゃないのかね。
レベル高の揃ったこの場にいまいち気が乗らなかった。
気分は帰りたいの一言だった。



連れ去られた手塚と不二の応酬は静かに始まっていた。
「だって手塚、言ったら来ないと思ったんだ。」
「もちろんだ。」
「ここまできて帰るとか言わないよね?」
ため息をついた手塚は、なんで俺なんだ、とひとりごちる。
すかさず、面白そうだったから、と返す不二を手塚は睨んだ。
ここまで睨まれるのに慣れている人物も珍しいだろう。
もしこれが不二でなくて英二だったら、怯えていたかもしれない。
「少しは愛想良くした方がいいよ。」
「元からだ。」
くすっと笑った不二はぶつぶつとクサっている手塚に助言した。
あの真ん中の子、さんって言うんだけど、と不二は方向を示しながら、言葉を続ける。
さん、乾のあの問題全部解いちゃったんだ。もしかしたら教えてくれるかもしれないよ?手塚のこれからの言動によると僕は思うんだけどね。」
笑みの華を咲かせる不二に、それ以上手塚が口を挟むことはなかった。
なぜなら手塚は驚きで、口パクしていたからだ。



不二と手塚が消えた後、は一生懸命思い出そうとしていた。
「えっと・・・、あのモダン・・・、どこだったっけなぁ・・・。」
見たことも話したこともあるんだけど、あの背高い人・・・、と呟く
猫耳鋭い菊丸はの呟きを聞き逃さなかった。
背高い人、というからには手塚のことだと簡単に推測できる。
強敵になりうる手塚なだけに、どこでどう知り合ったのか菊丸は知りたかった。
「え、さん、手塚知ってるの?話した事もあるの?」
「手塚さんねぇ・・・、どこだっけ・・・。ああっ!菊丸くんと不二くんと手塚さんか!繋がった!」
菊丸はさんの口から自分の名前が出てくるとは思わなくて、少し動揺していた。
しかもさらに強敵となりうる不二の名もでてきたから、思わずうろたえた。
照れている場合ではないらしい。
チーちゃんはに尋ねた
、手塚さんも知ってたの?」
「うんうん。そうだったそうだった。菊丸くんと不二くんと同じように手塚さんも有名人だよね?」
は戻ってきた不二の方をみた。視線はじっと手塚の方に向かっている。
「あっ、そうだその顔、手塚くんだ。なあんだ。いつもお世話になっている手塚くんじゃないか。」
「「「いつも!?」」」
ハモったのは、菊丸ととチーちゃんである。
「私服だったからピンと来なかったよ。ごめんごめん。会長。」
会長、と強調するに、手塚はようやくいつもの調子で、
「ああ・・、か。」
といった。
「どうなってんの?」
というチーちゃんに、あとで話すよ、というと、まぁいいかと返事が返った。



「ねぇ、・・・・」
は、の肩をつつく
「どうなってるの?これ・・・。」
、どうよ。コレ、凄いでしょ〜。イケメンZoo。」
は、入場料取れるよ、と笑っている。
たしかに、動物園・・・・なんて、ツッコめないよ!
「一体なんで、こんなことになったのよ?」
「えっへっへ〜。」
「なにその笑い、・・・無気味。」
「こないだ、サボリの連絡に、菊丸君が来てさ。そん時。」
そういえば、不二と菊丸君に、休みの連絡を頼んだことが、あったっけ。
あれは、菊丸君が、行ってくれたのか。
誰とでも気兼ねなく話せる性格をしていたを思い出す。
「えぇ〜?いつのまに・・・。」
「へっへ〜。」
「じゃぁ、不二狙いなわけですか。」
「やっだ〜、そんなこと私の口から言わせないでよ。それに、高望みはしないよ、もちろん。単に遊びに行くだけじゃない。」
「でもさ、よく考えれば、全員テニス部ってことでしょ?まずいよ。あとが怖いよ。アイドルだよ?」
「たしかにそうだけど、・・・集まっちゃったもんは、しかたないじゃん。ってこれ、がいいそうなセリフだよね。」
親衛隊みたいなものがいる、とは聞いている。過激だ、とも。
「じゃあ、偶然、って言うわけ・・・・?」
もし見つかったら、『偶然街でバッタリ』。
・・・そんな言い訳、通じるのだろうか?
「うんうん。」
「・・・・・・。」
私は、誰にも見つかりませんように、と祈った。
その横では、が、楽しみだね、とはしゃいでいる。
「コンパ、初めてだっけ。大丈夫大丈夫。」
固くなっている私を、はほぐそうとしていた。


その様子を菊丸はチラチラと見ている。
目が合うと、無邪気な少年のように、楽しそうに笑った。





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