白の死神 |
「隊長。、どうしたんすかね」 「知らぬ」 「見送りおわったときには、すでにこんなんなんですけど」 は、石田くんとかいう人のことを、ぼーっと考えていた。 ルキアがもらった現世の服はそれはもうかわいくて、センスあるものだった。 欲しい・・。あれはルキアのもので、ルキア向けに作られたものである。 私はどんなものが似合うのかな、そう思ったらウキウキした。 自分に似合うもの、というのは、案外自分ではわからないものだったりする。 「いいなあ・・。素敵・・・」 うっとりしていた。 「何が?」 と目前にぬっと現われた恋次。 「いや〜ん!」 恋次は顔真正面に平手をくらった。 「いって・・・。んだよ!このバカ力女!」 「まあ酷い。そんくらい避けなさいよ」 「んだとお!」 「騒々しい」 仕事はどうした、と白哉は言う。 「んでも、こいつ」 白哉は山とある書類の一枚をめくっている。 「処分されたいわけでもあるまい」 「く、首はイヤ・・」 「終わらぬなら終わるまでだ」 「うぎゃー、残業必死っ」 恋次の髪が逆立つ。 「つうか、。まともにやれっ」 はテーブルに突っ伏している。 「君は、恋する乙女がまともになると?」 「こ、こいいいっ!?」 恋次はいきなりな展開に、目を大きく広げて驚いた。 「これは恋ね。うん。間違いない」 は手のひらに顎をのせ、少しだけ顔を上げた。 その瞳はワンダーランドを泳いでいた。 「誰にだ」 静かなる声が通る。 「言えるわけないじゃないっ、っきゃ〜!」 今度は、恋次ははげしく突き飛ばされ、その方向に白哉がいた。 「まさかとは思いますが、まさかとは思いますが・・そのお相手とはっ」 恋次は下に白哉がいるのも構わず、誰々どんな人、と続ける。 「重い・・」 「少し長めの紺色の髪。純粋な瞳。透き通る白い肌。いいわあ・・。細い指。真摯な眼差し。どれをとっても1級としか思えないわよねっ!素敵すぎる。ああ、もうだめっ」 きらめく手の動きを想像すると、悶絶しそう。 の頬に赤みが差す。 「それって・・」 恋次が白哉を指差す。 あ、と恋次は下敷きにしているものを知って、あわてて退けた。 「す、すいません」 もうは自分の世界に浸りきっていて、何も見えてはいない。 恋話なんかをもろ人前で本人の前で話すわけがないよな、と恋次は思い直す。 「いいなあ。すごいなあ。うらやましいなあ」 アレはとても、かわいかった。 コホンと咳払いした白哉はぬるい茶をすする。 「でも、どうしよう・・」 彼は死神ではなく、クインシーというライバル業をしている現世の人。 しがない死神の一隊員では、出会うこともままならない不誠実な関係。 は凄い勢いで落ち込んだ。 「ねえ。今日、白哉のお家行っていいー?ルキアちゃんに会いたい・・・」 ねだるようにはいい、2箇所からガタッと音がした。 ラ、ライバル出現、と呟く恋次。 白哉は茶をこぼし、は恋のためいきをつく。 恋次は、ダメ、絶対ダメっす、と白哉に囁く。 「じゃあさ。現世行きたい。何か方法ない〜?」 「不可能だ」 「や、それイー考えかもっすよ!」 近づけたらダメっす、と恋次は白哉に訴える。 白哉は深刻なため息をついた。 「どちらもだめだ」 「そんなあ・・」 しくしくとは机に頬を寄せた。 恋次は肩を落としている。 「仕事にならん・・」 地味に疲れた様子の白哉の声は誰にも届かない。 ルキアに石田くん情報をあれこれと聞き、うきうき気分でルキアの部屋を出た。 いい夢が見られそうな気がする。 廊下を歩いていると、白哉に遭遇した。 「やはり・・・」 「ルキアちゃんに会いにきたんだし、やっぱり許可いらないかな、と思て」 の幸せそうな表情に、白哉は不審そうに顔を歪ませる。 「用も済んだし、もう帰るね」 白哉はの手をとり、思い切って尋ねる。 「ルキアに愛情を抱いているとは本当に本当か?ルキアでなければならぬのか」 それはもう救いを求めるような顔をしていた。 「はい?ルキアちゃんは好きな方だけどさ、愛って?」 「同性の婚姻は許されておらぬ」 「何考えてるのよ。んなこたあるわけないがな」 白哉ならともかく、というと、とても不快そうな顔をした。 「とりあえず放して。いますぐ」 「何の用だったのだ」 「別にそんなのいいじゃない」 「話してもらわなければならぬ。宗主として」 宗主、という言葉がやけに重たい。 あいかわらず高圧的で気に入らないけれど、責任ある立場は考慮すべきだと少しは思う。 私的ではなく、公的な会話。そう思うことにした。 「あんま納得いかないけど・・・。旅禍の話をしてました。あとは自分で聞けば?」 朽木宗主、と皮肉を加えて、ごきげんななめなはさっさと帰る。 朽木白哉は、よれっと崩れた姿勢から、さりげなく首に巻いた銀白風花紗を直す。 すっと障子が開いた。 「兄様・・」 「が来ていたようだが」 ルキアは突然の訪問に驚きながらも、答える。 「はい。楽しい時間を過ごせました」 普通ならいつもここで会話が途切れる。 ルキアは少し緊張しながら話題を考えたが、先に白哉に質問された。 「何の用だったのだ」 さきほどまでと話していた会話は、ルキアにとって思い出す必要もなく話しやすいものだった。 きっと相槌を兎打たれていたら、根無しのように止まることなく話し続けていただろう。 「黒崎一護のクラスメイトである石田雨竜という者に興味をもたれ、いろいろとお話を。旅禍のうちの一名だったのですが」 「興味・・」 「はい。クインシーの一族ですが、過程は違えど、目的は似たものです。くせのある人物ですが、正義感もあるのですよ」 「・・・・・」 「さんとお話しして、私もいくつか学ぶところがありました。いい女はいいものを着、いい男は真新しいものに限るのだそうです。それが得てして、人を見ることにも繋がり。非常に奥深いお話をなされ、私は感銘いたしました」 「そうか」 白哉はとても疲れた表情をしているように見えた。 まずかっただろうか、とルキアは不安になる。 しかし、白哉はどこか遠くを見ているような気もした。 あまり聞いていなかったかも。 「・・兄様?どうかなさったのですか」 「いや、よいのだ。必要なものがあれば言えばよい。私はしばらく考えなければならぬことがある。よく眠ることだ」 「はい・・」 ルキアは首を傾げた。 続きはまたにしよう、とルキアは思い、白哉の背に声をかけるのは遠慮した。 |
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