白の死神 |
朽木家の療養はつまらないものだ、とは思う。 ただひとつの救いは、白哉の布団で寝かされていること、というくらいである。 書置きにあるとおり、は部屋から出ないようにした。 襖が開いて、使用人から食事を置いていかれるが、現世の方の食事の方が何倍も楽しい。 は障子を開け、ルキアの気配が邸宅にないことを知る。 ソウルソサエティを出てから数日しかたっていないのに、こちらの世界は時早く進んでいる。 渡り廊下から進む足音がして、顔を出してみると白哉がいる。 クマ視点から見たその顔はとっても高い位置にあって、見上げていたら後ろに転んだ。 掬われるようには布団に戻される。 普段の数倍も大きい手のひらに守られているのを実感しながら、見えないものが見えるような錯覚を起こす。 白哉は何も言わない。 何も言わないが、伝えようとする。 向けられる熱い視線に、頬が赤くなった。 「あ、あのね」 「人の感情とは至極面倒なものだと常に考えていた」 の焦り先走る言葉を遮るように、白哉は静かに語りかけた。 「寂しさに気を取られる」 白哉はストレートすぎるほどにその心の中は裸だった。 「公正であろうとしても、その実、中身は左右されている。だが、不利益だとは思わぬ。ある価値判断に基づいた場合、倫理や規範に属さないものも出てこよう。私は、指導者でも教育者でもない。導き手ではない私は、幻ではなく現実を追い求めていた」 夢を語るようなまなざしで、現実を口にする白哉は、なぜだかほんの少し幸せそうだった。 「ルキアにはすでに伝えた」 は、布団から飛び起きる。信じられないように白哉を見て、抜け殻になったぬいぐみるも見えた。 「今後どうしていくつもりなのか説明してある」 「勝手な。どうせ、助けを期待するなとかなんとか言ったんでしょう!」 「ならば少しは私の心の内も考えてみてはどうなのだ!」 怒鳴られたは力一杯布団を被った。 「白哉が私に目を向けるなら、私がルキアちゃんの心配しなきゃいけなくなるじゃない」 「ルキアのことは私の責務だ。口を挟むなら、それなりの立場を背負ってからにするが良い」 白哉の言うそれは、朽木家に名を連ねろという意味だった。 家を対等の名家にすることではなく、内輪として。宗主のそれに匹敵する公式的な発言権を持つこと。 「・・・できるわけ、ないじゃない」 使用人は動かせても、関係者筋を動かすことはできない。 「緋真にはできなかったが」 「私だって、うとまれる出身は同じよ」 「表に出る必要はない。あくまでも裏方としてだ」 「ならわざわざ後妻になる必要もないでしょう」 「必要はない。だが、の居ぬ間、欲するものがひとつできた」 は、被っていた布団を不審そうに降ろした。 白哉は少し笑っていて、は怪訝に思う。 白哉はまっすぐにを見直した。 「ルキアは朽木の名に縛られるべきではない。逆には縛られねばならぬ。それが私の出した結論だ」 「・・なんで・・なんでそんなバカな結論に至ってるのよ」 「は私無しで生きられぬ確信がある。故に、強行にもなろう。とりわけ、私を私たらしめるのは、自身によるものだ」 「怒るよ、私」 「図星だからか。的を得ているはずだ」 「言ってる意味がわかんない」 「わからなければそれでいい」 「話が・・飛びすぎてる」 白哉は心の内で思うことがあった。それは、の子だ。 あまりに寂しすぎる時を過ごしすぎて、心底欲しいと思うようになった。 おそらくきっと賑やかだろうと思ったし、それがあってこそ自分自身の命に責任を持つような気がしていたのだった。 だけれど、そうなればまた新たな問題が出てくる。それでも、すべて背負う覚悟はできていた。 白哉は、一歩先、二歩先を見ていた。 「数百人を抱える家と、たった一人で倒れかけた家。話し合うこともないだろう」 家をバカにされて、はこめかみに青筋を立てた。 「家は、忌み族だが、とうの昔から絶滅危惧種に指定されている。それを保護するのも朽木の役目だ」 「違うでしょ。監視でしょう」 「どちらでも良い。無意識であれ死に急ごうとするなら躊躇わぬ」 「そんなこと思ってない。そりゃ昔は、早いとこ死んでおきたいと思ったこともあるけど、今は、ない。それに朽木に短命を継がせるつもりもない」 は、子を欲しようとはしない。 それはわかっていたことだが、と白哉はほんの少しさびしく思う。 ソウルソサエティでは肉親の概念は希薄なものだが、一族はどこより情に厚いといえた。 「人間に近い死神か。違うな。死神の枠を超えた存在だ。非難されるいわれはない。もし仮にそうなれば、朽木は共に滅びるべきだ」 「一人だから、まだ耐えられる。二人いたら、手に負えない。そうなったら、それこそ本当に朽ちる」 「共倒れ結構。だがそう簡単にはいかぬだろうが」 「冗談じゃない。手を煩わせない終わり方を図る一族は、誰かを巻き込むことなんて、望んだりしない」 「朽木でなく、私だとしてもか」 「朽木の名は利用する。それ以上の価値は、ない!」 「・・ここまでにしよう。冷静になりしだい、また話す」 「冷静だよ、私は」 「鵜呑みにするほど愚かではない。私との関係は、浅くはない。現世に行き何かを得たならば、それを話せ」 は白哉を見据えた。 「白哉から離れたい」 「・・・・できぬ相談だ」 白哉は目を落とし、はどれだけ傷つければいいのかと自分自身を嘆いた。 理不尽な関係だと思う。 互いに傷つき傷つかせ、得るものも何もない関係なのに、それでも何かを望もうとする。 表にでてくることのない愛に形はなくて、隠れようとする。 夕焼けを見て何かを思うように、眺めていられればそれでよかった。 けれど、今は、切なくて凝視もできない。 「にとって私が、利用するだけの価値しかないのであれば、またそれを私が利用する。泣いて拒めば多少は揺れ動くかもしれぬが、私がを必要としているのだということは忘れるな。私が、必要としている」 「白哉・・、白哉のその純粋すぎる想いは、私には重すぎる」 白哉は、背を向けた。 茶器に手を伸ばす白哉は痛みを呑み込もうとしているようだった。 は、かける言葉が見つからなかった。そうさせているのが自分だということも、信じたくなかった。 白哉は鮮やかな手さばきで、湯を混ぜ合わせ、そこから薬湯の匂いがした。 現世に持っていくのを忘れていた薬だった。 袖を押さえて差し出す白哉は感情をすべて塞いでいて、はそれを受け取ることができなかった。 「煩わせたくなくば、きちんと飲み干すことだ」 「・・それとこれとは・・」 は薬湯を覗き見て、鏡に映る自身を見る。 「ルキアを通し、そなたを見ていた。その薬を飲んで蒼ざめるのも、愉快ではある」 「・・飲ませたんだ」 「アレは緋真に似ているが、おまえにも似ている」 「どこが」 は言って、静かに飲み干した。 底を見るその眉間に皺が寄る。 「ひたむきさだな」 「あんなに可愛くないよ」 は茶碗を畳に滑らして返した。 「ああ、そうだな」 「・・むかつく」 「ルキアもまた、朽木の家にあって、そなたを見てきた。多少似るのも仕方のないことだろう」 「それ、私がわけのわからない生き物のように聞こえるけど」 「自身の在り方を見直している最中だ。そこまで似てほしくはないのだが」 「スルーしたね」 「は二人といらぬ」 「・・・」 「特に自滅するような得意技を持つ者などな」 「はんっ。好きでそうなったんじゃないわよ。・・・結局、無茶するなってことなんでしょう。それはわかってる。終止符を打つつもりなんかない。だけど、白哉は、すべてから守ろうとする。それが私にはたまらなく辛い」 「他人のことよりもまずその身を心配してくれ。でなければ、落ち着かぬ」 「白哉の存在そのものが邪魔でしかたないの。心配されるのも、愛されるのも、もういらない」 怒るかと思ったのに、白哉は静かなままだった。 「・・・想いには限界があると最近知った。目の当たりにしたのは初めてのことだ」 穏やかすぎて、流されそうになる。冷たさの中に吹く風が、とても愛おしくて切ない。 これから何を言われるのか、ある程度の想像はついた。恋愛なんて、一過性のものにすぎないと客観的になればわかることだ。 覚悟はできているはずなのに、余裕が足りない。 「なぜ泣くのか理解に苦しむ」 「うるさい」 「良い。涙もろさはそなたの専売特許だ」 「白哉なんかいなくたって生きていける」 「なかったことにはできぬ。捨てることはできぬ。理由が必要ならば、すべて私が用意しよう。その代わりに私は私個人が生きる理由を頂いて参る。そなたの意志など必要ない。朽ちるなら私の手の内で朽ちよ」 白哉の器は、どこまでも広い。 「正当化するつもりはないが、できぬなら全て奪う。捨てて戴く。その命さえ私自身の手で手折り屍と化すことも厭わぬ」 土俵際に白哉はいた。 なんという人に愛されたのかとは思う。 白哉は本気だった。真剣と書いてマジと読むあれを、その瞳にたたえている。 「やってもらおうじゃないの。全力でもって抵抗させてもらうわ。今殺さなければ永遠に私は手に入らないと思って」 「それで楽になるのならば」 白哉は刀の鍔に手をかける。 「場所を移そう、白哉」 「ここで良い。私が倒れれば、朽木もとともに消滅する。あとくされがなくて良い」 「生き残って、罪人の証を見せ付けられるのは御免だわ。こんなことで歴史に名を刻むのは嫌よ」 「ならば、そなたの家にでも行くか」 「いいえ。死神の巣でやろう。観客が多い方が華々しくて良いでしょう?」 売り言葉に買い言葉は、エスカレートしていく。 けれども、本心にないことでもなかった。 は思う。 これで、楽になれるのなら。 「それ以上飛ばせば箍が外れるぞ」 「知ってる。だけど、あなたほど、お人よしじゃない」 白哉は出方を待っていた。 「いい趣味をしていると思わぬか」 「ほんとにね。私のためかと思うと涙が出るよ」 「参考程度として聞いておこう」 白哉は軽く目を瞑り、そしてゆっくりと開く。 「残魄刀を持て」 「そんな高尚なもの持ってない」 「一度ほど見ておかなければ、やりきれん」 「急かさないで」 「時間がない」 「善処するわ」 「・・・散れ、千本桜」 は、歯を食いしばった。 「なぜかかってこない」 「確実に倒せる法をまだ見つけていないだけよ」 「にしては無駄な時間の使い方だ」 「懐に入らせてくれないのはどっち」 すっ、と白哉の指先が動き、ピクリと反応する。 隙を見せた方の負けかと思う。 「そろそろ人が集まりかけている。見てみたらどうだ」 「あいにく白哉しか見えないもので」 「確かにな」 ふっと白哉が笑う。ささいなことといえるかわからないが、ひとところに向けられる視線が嬉しいと思う。 死神を長く続けると、モラルも何もなくなるものなのかもしれない。最愛の人を殺してもなお、手に入れたいと望むもの。 その点、の先祖は代々よく自我を持ち続けたと思う。その最期は力を解放しようとするものらしいが、ひっそりと皆消えていった。 誰より優れた精神力。だが、それに負けるわけにはいかないと朽木の誇りが叫ぶ。 は刀身を両手で挟み込み、押し込まれる形で呟いた。 「朽木白哉って尋常じゃないよ」 「そなたもな。だが残魄刀がなければそこまでだ」 「言ってくれる」 「散れ・・」 千本の刃に散った刀身が、体を掠めるのと同時に、散開する。 足を当て揺らいだ瞬間にそこから出たは、また距離を見る。 桜吹雪は、ひとところに集まって、霞に消える。 「千本桜はそなた向きではないらしい」 「当然でしょ」 「笑える話だ」 舞いをイメージして得た千本桜は、風のように動き刃をいなす本物を前に用を為さない。 は瞬速の動きに慣れ始めていた。 「だがそれもいつまで持つか・・・。卍解」 白哉は霊圧を高め、安全圏にいるの気を削ぎ挑発する。 の全身から冷や汗が流れる。 「現世でいくらか戦いに慣れたようだが、根本的な問題は何一つ解決されておらぬ」 「悪かったわね・・」 キリっとは白哉を睨みつけた 「何やってんだ、あの二人は!」 「ん〜、何やってるんだかねえ」 「つうか、見てねえで止めろ」 「こういうの専門外でねえ〜」 「くそっ」 「よしなよ、日番谷くん。止められるもんでもないでしょう。それに二人がどこまでやるか見ものでもある」 「バカ言うな、あいつが死ぬぞ」 「さて、誰を心配したらいいのか・・。俺にはわからんけどねえ」 「大体、帯刀令も出ていないのに、やりあってること自体おかしいだろ」 「日番谷くん、あのさあ。はいつ殺されても文句言えないんだよ」 「どういう意味だ」 「の病はそれに比例する力を持つ、らしくてね。瀞霊廷にとってその存在が脅威。だけど、おじさんも、そのまたおじさんも、功績をあげてる一族でもあるから死神として黙認されている。中央四十六室、いや、いまはないけど、が瀞霊廷に仇為すときには各自の判断でいつ殺してもいい認可がおりている。朽木も。俺も。もちろん、日番谷くんもね」 「知らねえぞ、そんなこと」 「そりゃあ、誰も言ってないから。誰もを殺したくはないしね。ただ一人を除いては」 「朽木があいつに何の恨みがある」 「さあねえ。縁深い二人のことだから。だけど、殺すときは自分の手でって決めてるみたいだったし、も承知してるはず。だけど驚きは、あのが朽木に対して本気で向かい合ってることの方かもなあ。貴重な戦いになりそうだよねえ」 「よた話をしている暇はないと思うが、京楽」 あれをみろ、と現れた浮竹は空をみあげ、京楽も目を細めた。 「あららぁ・・」 の霊圧が不安定になりかけていた。 「兄様とあれは・・殿・・なぜ・・」 浮竹と共に来ていたルキアは、戦いの空気に呑み込まれて足が震えていた。 「ルキア、近づいてはならん。一発触発の状態だ。巻き込まれる」 「・・いけませぬ、お兄様っ・・、なりませぬ、殿っ!」 ルキアは苦渋の瞳を掲げる。 もまた、ひくにひけないところまできていた。 やらなければやられる。 白哉の手で死ねるなら本望だけれど、何もせずに終わりたくなかった。 「殲景・千本桜景厳」 銘を刻む朽木白哉に、力が引き出される。 の手に、残魄刀が握られていた。 それは普通の形をした、普通の色をした、普通の輝きを帯びた刀。 けれどもそれは魂と呼応するように芯が虹色に光り、自身を開放しようとする。 「見事だ、。・・・今、楽にする」 白哉は刀を持ち直した。 「やめろ、朽木!」 日番谷は叫び、浮竹と京楽の鍔が鳴る。 「終景・白帝剣」 誰が止める間もなく、ルキアが駆け出した。 「波悉く我が盾となれ雷悉く我が刃となれ」 「花風紊れて花神啼き天風紊れて天魔嗤う」 浮竹と京楽が続けざまに掛け声をかけ、日番谷は焦る。 「双魚理」 「花天狂骨」 「くそっ!霜天に坐せ、氷輪丸!」 ほどなくしてルキアが力無く膝をつく。双方の霊圧はすさまじく、殺気に満ちていて、押し潰される心地だった。 朽木白哉の千本桜を真っ向から受け止めたの名もなき残魄刀が砕け散る。 柳の枝のようにキラキラ光り降りる虹霞は、ふとぐわり、と歪むように揺れて周囲の霊気を圧縮する。 躊躇なくを襲う浮竹の霊力と、それを追うように日番谷の霊力とがぶつかりあう。 何が起きたのか、すべての霊力が霧散していた。 京楽はというと、防御をまったくしていない朽木白哉の近くにいる。 「なぜ・・私を生かす」 「・・そりゃあ、れもんがそう言った気がしたからさ」 活動を停止したを見る朽木白哉は、死んだ瞳をしていると京楽は思った。 「お、おいっ、っ!」 「に、触れるな」 なぜ死んだのかわからないとでもいいたげな不思議そうに空虚な瞳をする朽木白哉に、日番谷は腹が立つ。 「てっめえ、何てことを!」 「止すんだ。日番谷くん」 朽木白哉はなぜ自分が生き残ったのかを問いながら、に近づく。 「浮竹!あんたもだ!勝負はあったはずだ!なのになんでとどめを刺した!」 「日番谷くんも見たはずだ・・、ごほっ、ごほっ」 最期に見せた力の解放。精一杯あがくようなそれは、必死に生きようとして、そして消えた。 「ちきしょう!信用ならねえ!どいつもこいつも!大事なやつなら近づくで守りやがれ!どうしてこんなっ・・なんでなんだっ」 朽木白哉は横たわるに跪く。 力のあまり残っていない体でそれを引き寄せて、抱え込んだ。 「本当に・・無茶な方たちですね・・・」 卯ノ花が、目を伏せて降りてきた。 「こんなときに副隊長がいないというのも・・、狙ってやっているとしか思えませんわ」 「飄々としてねえで、なんとかしやがれ!」 日番谷が息せき切って躍り出た。 「そうですわね。ルキアさんから見ましょうか」 ルキアは体の震えが止まらないでいた。 「お兄様たちを・・先に・・」 「ルキアさん。残念だけれど、あの二人は手に負えないわ」 「・・・それは・・・そんな・・っ」 「誤解しないでくださいましね」 卯ノ花はルキアの治療を終えて立ち上がり、二人の元に向かった。 「よくやったと思いますよ、さん。道中、死体が転がっているかと思えば昏倒しているだけでしたし。私も半分以上削がれてしまいましたけど。つける薬もないっていうのはこういうことなのかしら。どう思いますでしょう、朽木隊長」 白哉は、を抱えながら静かに言う。その腕に、ゆっくりと力が入る。覚えのある、ある確信と共に。 「もうしばらく・・待ってもらいたい」 「・・・はい。存分に」 顔を見合わせる者たち数名。 白哉の目元口元には笑みがこぼれていて、が生きていることを知った。 わずかにしか聞き取れない遅い脈が戻ってきていた。 「ですから、言ったではないですか。さんの消滅時には、姿形も消えうせ跡形もなくなるはずなのです」 「それを先に言っておくれよ〜。もうダメだと思っちゃったじゃない」 「俺は聞いてねえぞ。体が弱いことくらいしか」 「あら。知らなかったのですね」 「あとは酒癖が悪いことくらいだな」 「おっ、一緒に飲んだことあるのかい〜?」 「飲んだ跡のことなら見た」 「えっ、ずるいな、それはっ。僕は見たこと無いんだよ」 「俺もないんだなあ〜。ずるいよなあ〜」 「ずりゅいとかずるくないとか・・」 「ずりゅいって何だ」 「ええと、あ〜・・ごほっごほっ」 「都合がいいよな」 卯ノ花はキリの良いところで遮った。 「それより。運ぶのを手伝ってくださいまし」 「朽木は」 「お眠りになりました」 「朽木が人前で寝るなんてなあ」 「ほっとされたのでしょう」 「は。動かして平気なのか」 「慎重にお願いしますわ」 「じゃあ、このまま持ってくかあ。浮竹・・は役に立たなそうだな」 「俺がやる」 「よろしくねっ」 「黙れ。それより、本当に大丈夫なのか、こいつ。全然気が感じられねえけど。いや、薄っすらか」 「ただし状態は決して良くないでしょう。先日、現世で負担をかけてきたばかりですし、休む間も無く暴発を抑え込んだことで、ずいぶん進行しているはずです。これでは死なせたいのか死なせたくないのか、わかりませんわね」 「死なせたくないんだろぉ〜よ。俺もそうだしねえ」 「あんたは朽木を助ける方に回ってただろうがっ」 「忘れちまったなあ〜」 |
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