ゆうた



「・・・だから部活に入ればいいじゃないか。」
「うっせぇ、絶対やだね。」

は、周助が下級生と話しているのを見かけた。
周助よりもやや背の低いその男の子は、くってかかっているような雰囲気だった。
ちょっともめている感じだ。
周助は少し困ったように言葉を選んでいる。

「周助どうしたの?」
「ちっ・・・・」
周助に声をかけるとその男のコは舌打ちをしてその場を去って行く。
だれにも見られたくないシーンだったようだ。
周助は少し驚いたようで、気まずさを消すように、いつもとあまり変わらない笑顔になった。
それなのに、どこか責めるような口振りが残されていた。
。いつからそこに?」
「今来たとこ。なんか揉めてたみたいだけど?」
「そんなことないよ。いつもこんな感じだから。」
その話題には触れられたくない様子のオーラを帯びていたので、聞くのはやめることにした。
世間話をしていると元に戻ったので、その時は周助がこんなにも悩んでいた事を私は気づけなかった。
音符がついてない事に、私はどうして気づかなかったんだろう。




―― 少し前に周助と話したのを覚えている
昼休み、きっかけは忘れたけれど、兄弟の話が持ち上がった。

、兄弟いないの?」
「いないよ。」
「あ、両親なくなったんだったね。変なこと聞いてごめん。」
「いや、別にいいよ。それに今お世話になってるところが家族みたいなもんだから。」
「どんな人?」
「そうだねー、ひとことでいえば面白家族。」
「やさしい人達みたいだね。」
「周助には兄弟いるの?」
「うん。姉さんと弟がいるよ。」
「家族全員同じ顔してるでしょ?実は周助、たまに入れ替わってたりして。」
周助は一瞬呆れたような表情を見せたがすぐに笑い出した。
「なんでそうなるのさ、酷いなぁ。」
「ようやく笑ったわね。なんかしらんけど元気だせ。」
聞かれたくないことは多分家族のことについてだろう。
一瞬、周助が言いよどんだ気配を感じたからだ。
・・・聞かれれば答えるけれど、言いにくいことってあるからなぁ。
きっとそういうことだろうと思う。
「そうだね。、ありがとう。」
「やけに素直だね、周助。」
「僕はいつも素直だよ。」
周助のありがとうというひとことには色々な意味が含まれているような感触がした。

あのときの会話を思い出したのは実に偶然だろう









周助が沈んでいた日、私はこんな事故に巡り合った。

「不二の弟君。テニスやらないのかい?」
「弟くん、テニスやるんでしょ?」
「弟君は部活入らないの?」
そんな声に囲まれていたある一人の男のコはいいかげん疲れていた。
その男のコは居心地が悪くてその場から離れたかった。
声がウザくて廊下を走り急いで角を曲がろうとしたそのとき、
見知らぬ女性と派手にぶつかってしまった。
勢いがついていて、よけることができなかった。
つまり、俺はその女性をふっと飛ばしたのだ。

「す、すいません。」
その人はどうやら年上のようだ。
大丈夫ですかと声をかけても返事はない。
どうすればいいのかわからぬまま、とりあえず保健室に連れて行こうとすると、
近くにいた年上風な男が近寄ってきた
「あー。が伸びてる。」
「ど、どうしましょう。」
「ほっとけよ。それよりおまえ今すぐ逃げたほうがいいぜ。」
「え?」
なにがなんだかわからないままうながされるままに、男の子はその場を追い出された。
この女性の知り合いのようだからあとは彼に頼もう。
とにかく頭を冷やして冷静になろうと誰もいない屋上に行った。




は目が覚めるとそこは保健室で、隣に宮島と不二がいた。
・・・誰かとぶつかったような気がする
「あれ?私宮島とぶつかったの?」
「ち、違うぜ!絶対俺じゃないっ!!」
宮島は、必死に首を横に振った。
「うん。ちょっと周りに聞いてみたけど違うみたいだね♪」
周助のフォローに、宮島はほっと安堵する。
「周助。なんで微笑みながらも残念そうな顔してんの?」
「逃げられたんだ♪でも逃がした犯人はここにいるよ♪」
はあ・・・
宮島が断固反対論を唱えている。
「クラスの男子が何するかわかんねーから逃がしたんだよっ。」
「名前くらい聞いといてくれればいいのにね♪」
あとから聞いた話だけど、
ぶつかった時に宮島と一緒に居たクラスの男子はファンクラブ員に通報しに行ったそうだ。
それで騒ぎになるとまずいと思ったらしい。
周助の様子からみても逃がして正解だったわね
なにやらすごいおしおきが待ってそうだし?
でもそれってワクワクするわね
宮島がどうなるのか面白そうだし、知らない人じゃないから止めないわよ
教室に帰ると不二はクラスメートに説得されてお仕置きはなしになった。
・・・んー残念。もうちょっとで見れたのに




気づけばすでに部活の開始時間を過ぎていて、
周助は、走らされるのは自分のせいだとなすりつける。
急がないのと聞いてみれば、自分が急いでないからだそうだ。
一人で部活行っていいと言っているのに、周助はいつまでも待つらしい。
カバンに必要なものだけしまっていると、
「ね・・・今日は部活行かないの?」
すごく淋しそうな声色の台詞で私はかなり戸惑った。
顔をあげてみると周助は目に手を当てて泣いている。
うわ、メッサうそ泣き・・・・・・
が一緒に行ってくれないと、僕走らされちゃうよ・・・」
うわ、結構似合うな泣いてるフリ
「・・・・・・私が一緒に行っても走らされるんじゃないのかい。」
「でもと一緒なら♪」
「結局走らされるんじゃんか。」
「そうなるね♪」
二人で走って何が楽しいのだろう周助は・・・
面倒臭い事は嫌いなんじゃなかったか
そして急がず慌てず余裕で部活に乱入する。




「今日はに付き合ってて遅れました♪文句はに言ってください♪」
おい、二人じゃないのか、周助よ
少しは走れ
即納得して無罪放免する部長もなんなんだ
部長も走れ
、昨日参加したのに今日もやってくれるのか?」
出ろと言わないトコロは素敵だな
「だったら俺のフォーム見てくれ!」
ガシッと肩を掴まれる。
あんまり凄い剣幕なので、私はツイ周助に隠れてみる。
「ぶちょ〜、今日は僕が先約だよ♪」
するととたんにガックリ肩を落とす部長はおもしろすぎる。
「いや今日は帰るって。」
「せっかく連れてきたのにな♪」
周助の本当に淋しそうな表情が気にかかったのだが、気にしている暇は与えられなかった。
いままで荷物持ちをしていた周助が、私のカバンを押し付けたので、強引に私は追い出された気がしないでもない。
今日の周助・・・駄々っ子みたいだ・・・
ジャンケンに負けて荷物持ちになった周助のくやしまぎれな行動だと、私は素直に間違った方向で受け入れた。
そしてそんな印象を受け止めながら、は帰路に着こうとした。




コート沿いを歩いて校門へ向かう。
その途中にコートをぼーっとした様子で眺めている男の子がいた。
その男の子の横顔を見たとたん、なぜか周助の刹那の表情が頭をよぎっていった。
足を止めて私はコートの方へ体を向けた。
周助は笑っていた
英二は飛び跳ねている
国光は周助の話を聞いている
秀一郎は部長と話している
河村は一年生に謝っている
乾はストップウォッチを両手に持ってカチカチさせている
皆、楽しそうだった。
はふと疎外感を覚えた。




あの輪の中に入れたらどんなにいいだろう。
私は自然とコートの柵に手をかけた。
外から見るコートの風景は、あまりにまぶしくて切なかった。
どちらも切り捨てられないそんな自分を懺悔した。







あとがき

私がイメージしている不二周助は白いです
どんなに黒い行動してようが、感じるのは白さだけ。
それって一体どうなんでしょう

愛〜それは〜PI−−−。


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